株式会社ふくまる様
障害者総合支援法で定められている「障害福祉サービス」の一つである「共同生活援助」。生活のサポートや日常生活の支援を、同法の定める障害者の方を対象に行うもので、一般的にグループホームと呼称されます。
株式会社ふくまる様は、2017年からそんな知的障害、精神障害の方々を対象としたグループホームの経営事業を展開されている企業様です。代表の安川様は業界でも珍しい“データベース”の構築を自ら行い、事業の業務効率化や利用者様へのきめ細かいケアに役立てておられます。
株式会社誠勝では、このデータベースにインポートしているスタッフ日報のデータ入力(Excel化)を約2年に渡り代行させていただいております。
グループホーム経営における課題、スタッフ日報をデータ化するねらい、誠勝へご依頼いただいている理由について、株式会社ふくまる 代表取締役 安川聡子 様にお話いただきました。
※本インタビューはビデオ会議で実施しました。
自立した生活を送れるようきめ細かいサポートを
御社の事業内容について教えてください。
知的障害や精神障害をお持ちの方を対象に、自立支援を目的としたグループホーム(共同生活援助)の経営を行っています。現在までに神奈川県相模原市内にグループホーム「ふくまる御園」を計5棟、「ふくまる相模」を1棟設立しており、来年2月には「ふくまる相模」の2棟目が完成する予定です。
利用者様は、具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか。
お仕事の内容としてはレストランでの調理やリサイクルショップの店員、パソコンの部品取り外しなどがあります。
精神障害と言っても一人ひとり症状が異なりますし、見た目や行動に健常者との大きな違いがあるという訳ではありません。『Aが終わったらBをやって、Bが終わったらCをやりましょう』という風にしっかり説明をし、その方のペースで進めてもらえればこうしたお仕事に従事いただくことが出来る。特にアクシデントが無ければ淡々と作業をしていただけます。
日報のねらい、データ化した理由
ご依頼頂いている日報は、そうした利用者様の記録ですね。
はい、生活支援員が毎日書くもので、記述式とマークシート式の2種類があります。主に日中は入居者様が就労に出ているので、夜の食事や身の回りのお世話をサポートする中で、利用者様の変化などを記録してもらう為のものです。
日報は日々利用者様の動きを追っていく中で『なぜ、こうなったのか?』ということに対し、ある程度踏み込んで細かく追求する必要があります。また利用者様によって、例えば『夏は元気だけど、冬になるに従って気分が落ち込んでいく』といった傾向が見られる。こうした傾向は注視していかないと心身の健康に関わる重大な問題に発展することがあるので、細かく把握しておきたいというねらいがあります。
一律で自由記述欄にせず、項目を細かく設けている理由は何でしょうか。
すべて自記述欄にしてしまうと『この利用者様は詳しく書いてあるのに、こちらの方はあまり記録されていない』などといった風に、利用者様へ提供するサービスが均一で無くなる恐れがあります。また、状況によっては生活支援員に記述する余裕が無い時もありますので、“丸をつける”だけで良い項目はマークシートで、『自分が本当に何を見たのか、聞いたのか』を具に書いて貰いたいものは記述式にしている、という事情もありますね。
日報をデータ化しようと思ったきっかけは?
御社にお願いするまではファイルに閉じて本社で保管していました。ただ量が半端なく増えていきますし、日報の抜けや漏れも出てくる。データ化したのは、この際ファイリングする量自体を減らしたかったこと、後でデータを見返した時に検索やソートを行えるようにしたかったことが理由です。例えば『この入居者様の半年の傾向はどうだったか』を見返したい時に名前で検索出来る、そんなデータベースにしたいと思っていました。
入力作業を自社内で行おうとは思わなかったのでしょうか。
この数ですと私一人では難しいですし、仮に入力だけに集中する方を雇うよりはコスト的にも外注した方が良いと。また、日報には利用者様の非常にセンシティブな内容が書かれていて、当然作業する人も記載内容を知ることになるので、しっかり守秘義務を果たしてくれる業者さんを探していました。
どのような基準で業者を探されましたか?
インターネット検索で探したのですが、御社に決めたのは学術的な文書のお取り扱い実績があったからです。本件は作業される方の知識や高い作業クオリティが無いと受けられない仕事なのでは…と。
他の業者様にも2、3社声は掛けましたが、オンラインでのお打合せを断られたり、チェック作業がその会社規定の方法でしかしていただけなかったり。私としては『これだけやって欲しい』という要望があるんですが、そういった自由度がなかなか無かったんです。
初めてご依頼いただいた時のことを教えてください。
まずご担当者様と打ち合わせをして『この項目がこちらの項目に対応したExcelになります』という、納品データのイメージを2人で作っていきました。最終的にはMicrosoft Accessにインポートしたかったので、それに対応したフォーマットを作りましょうということで。
今では私自身がスキャンした日報のPDFを送ることもありますが、最初は送り方が分からなかったので、原本をそのまま御社まで送ったんですよね。数カ月分のカルテをまとめてだったと思います。
最初に納品データのExcelをご覧になっていかがでしたか?
打ち合わせのイメージ通りでした。それから『どうやったらお互いセキュアに、スムーズに進められるか?』『日報の渡し方は何が良いか?』を試行錯誤しながら、お互い協力し合って改善してきました。誠勝さんから『このスケジュールで送って欲しい』『こうして欲しい』と言われても、こちらの都合上これ以上は…という時もあります。だからこそ話し合って決めることが出来るのが非常に嬉しいですね。
先ほど仰っていた『自由度』についてはいかがでしょう。
むしろ私の方が自由にやらせていただいている(笑)。時間的に日報の仕分けが出来ないこともありますので、沢山の量をそのまままとめて送ることもあります。でも本当にスムーズに裁いてくれて、私がそちらに注力しなくて済むので本当に助かっています。
以前、何月分の日報なのかを詳しくチェックできないまま送ったことがあり、後から一か月分ほどダブっていたことが分かったんですね。その時にフォルダを整理して、どこに何月分を入れようかを改めて相談し、解決したことがありました。お互い協力し合って改善していく、その方向でやってこれたのはとても良かったです。
ここまでフローが気持ちよく流れてくれると、他の業者さんは探さなくて良いかな、と(笑)。
これからはデータを活かす経営者が求められる
日報のExcelデータは、どのように使われていますか?
Accessにインポートして、利用者様のデータベースとして使っています。
利用者様の症状、個々人の傾向は人によって変わります。データベース上ではそれが簡単に検索出来るので、現場の業務効率化に繋がりますし、新しく入ってきた支援員にも『この利用者様はこういう症状がある』『ここ一週間はこういう状態が続いている』といった利用者様の情報を事前に共有が出来、スムーズに現場へ入って行くことが出来るんですね。
御社にお願いする前に、自分でも色々とデータベースのサービスを探したんです。でも介護系、特に高齢者介護に特化したものはあるんですが、我々のようなグループホームに適したソフトが無かったんです。これは私の“想い”ですが、介護の業務関連のデータはとても分厚い。介護業界はまだアナログな部分がありますが、これからはそういったデータをきちんと扱っている、そんな経営者が求められてくるのではないかと思います。
将来的にすごいデータ量になりそうですね。
日報の項目は増える一方なんです。先ほども言ったように色々な方がいらっしゃるので、色々な事例を残し、予め各ケースを想定した設計をしておきたいと思いまして。情報を集めている途中ではあるんですが、もっとノウハウを積み重ねてより良いデータベースにしたいと考えています。
あと、データは日報だけではないんですね。生活支援員の情報も膨大になってきていますので、採用した時に提出した履歴書類等も、日報とは別フローでデータ化をお願いしています。他にも整理されていない書類がまだあるんですが、形式が統一されていないのでどうやってデータベースに入れれば良いか考えているところです。それぞれ整理をして、データの分析方法も含め、どういう形でアウトプットにするかを相談させていただければと思います。
ただ、やりたいことを全てやろうとすると壮大なデータベースになってしまう(笑)。あまり広げず、キーとなる部分に注力したいですね。最終的には“紙にある情報は全てデータ化されており、リレーショナルな検索や活用が出来る”、その状態まで目指したいと思います。